デザインマネジメント講座

デザインマネジメント講座 9

「独創的な発想を生み出すマネジメント?」

ideacoイデアコの製品の特徴について業界関係者、消費者の方々からありそうでなかったという表現でよく語られています。

イデアコがスタートしたきっかけは1998年デビューのcubeという傘立て。その形態的特徴である傘の先端を挿して立てて収める発想の製品は1998年当時世界中のどこにもありませんでした。

そのデザインは英国Wallpaperというデザイン誌やNew York Timesでも紹介され、またパリではトヨタ自動車IQコンセプトのプロモーション会場を飾るミニマルな日本デザインを象徴する製品という事で紹介されました。

またデビュー以来200万個の販売に迫るideacoゴミ箱tubelorも、ありそうでなかった製品・・・そのようによく表現されます。

先日も特許庁で講演させていただいていましたが、何故私に講演のご依頼をいただけたのか、どなたかのご推薦ですかとたずねさせていただいた所、いいえ特許庁の審査官の方々がideacoの製品をプロデュースする羽場の発想のアクティビティが聞きたかったということであなたを呼ばせていただいたのですよという事でした。

さて長々と自慢話をしてきましたが本題に入ります。

「どこからそんな製品のデザイン・発想が生まれてきたの???」

お答えします。

”偶然なんです”

まったくの出会い頭”ってやつなのです。僕が取り立ててすごい発想力や発想の仕組みを持ち合わせているという事ではありません。イデアは企画デザイン会社としてスタートしてからの10年間自社製品を持とうという発想も実はありませんでした。でも設立から10年を経て私の中にも自分たちの製品を持ち自らリスクを持って世に問うてみたいという願望が生まれてきていました。そんな願望が偶然を呼び寄せるのです。

陶芸が趣味であった私は愛知の常滑を旅行中、陶器でできた3本のパイプに傘をさして傘立てにされているある陶工での光景が偶然にも眼に飛び込んできたのです。傘を挿して仕舞う、狭い日本のアパートメントの玄関にこの発想は使えるとピピッときました。この瞬間から1年後にcubeはカタチになりました。

またゴミ箱のtubelorはお得意先のバイヤー様が「スタンダーな良いゴミ箱が無いのです、考えてもらえませんか」という一言をいただいた事がきっかけとなり、スタンダードなゴミ箱とはいかなるものかと四六時中考え続けて半年後頭の中でパッと絵になって生まれたのがポリ袋の存在を隠せるカバー付きのゴミ箱でした。頭の中で生まれた絵にはちゃんとゴミが滑り落ちておさまるように口はうす型形状に描かれデザインは完璧に頭の中で絵となって完成していました。

ここで独創的な発想を生みだす為のマネージメントをいかに仕組み化するかという方法論について語りたいところですが、それはある仕組みと手順を踏めば生み出せるというものでは実は無いのです。しかしながらそのような独創的発想を生み出すにはいくつかの条件があります。

それは生活の習慣や姿勢、願望や情報環境、精神状態、健康状態、持って生まれた性格や才能も、もちろん天分もあります。そのように様々な条件が織りなされたとき偶発的な出来事、新しい発想が右脳の中で絵となって現れます。次回またその辺りの要件を整理しご紹介しようと思います。

2017-11-10 ©Ichiro Haba
シンプルに美しく暮らす