デザインマネジメント講座

デザインマネジメント講座 54

「未来をデザインするコンセプト 2」

さぁ未来をデザインする事を考える上で最も大切な事は将来世代がよりよく豊かに暮らせるようにサスティナブルな社会、暮らし方をデザインで実現するという事になります。

無駄を無くし、ゴミを減らし、リサイクルを促進する事、哲学的に言えばすなわち足るを知る事、礼節を持って事に当たる社会の実現が本質である事は確かであり周知の事実であります。

ところがです、世の中の権力というものは決して未来の世代の事なんて考えてはいないという事なのです。今、手にしている我が利益、組織の利益・既得権益を守る為にはサスティナブルな社会を実現できる素晴らしい技術も封じ込めてしまうのです。

先日このような出会いがありました。その研究者の方はカーボンナノチューブという材料を用いてクルマに使われている鉛のバッテリーを再生する溶剤を開発し、その溶剤を充電力の減たったバッテリーに充填する事でそのバッテリーは新品に近いほどによみがえるのです。まさにリユースでありリサイクルを実現できる技術です。もうその技術は20年近くも前から存在するのですが、しかし今まで世に出てくる事はなかったという代物です。バッテリー製造会社も販売業者も古くなったもの次々と捨ててもらい新品を買ってもらう事で利を得ています。そんな所にバッテリーを少しのお金で再生できるような技術が出て来てもらっては新品が売れなくなるので困る訳です。バッテリー販売市場の既得権益者はそのメーカーや販売業者にとどまりません、そこに材料を供給する大手商事会社、バッテリーメーカーから税金を得ている国、そして管轄の地方自治体・役所、その利権に関わる政治家さんたち。

既得権益者によって社会に良い技術であっても自分たちの損になる杭は打たれてつぶされていく訳です、怖いですね。未来をデザインするってことは、すなわち過去の高度成長時代の既得権益者との戦いでもある訳です。

今年はNHK大河ドラマ 西郷 SEGODON が放映されています。社会は至る所で改革革新・イノベーションが正義として語られていますが、その障害となっているのは、実は一方で改革革新と大きな声で語っている方々であるのも寂しいかな現実なのです。

そのようなおかしな世の中を市民レベルで小さな所からでも変えていくアプローチをしていかなくてなりません。

2018-06-19 ©Ichiro Haba
シンプルに美しく暮らす